月刊人事労務

Z世代人材の定着・指導・育成について

1.Z世代とは?

 最近顧問先のお客様から「Z世代」の若手社員をどう扱えばよいか?というお悩みを聞くことが増えてきました。Z世代は1996年頃から2010年頃に生まれた世代を指すのが一般的です。現在の年齢でいうと、13歳頃から27歳頃にあたります。この世代は、デジタルネイティブ世代ともよばれるように、生まれたときからインターネットやスマホが当たり前。他の世代と比べてSNSやネットへの感度にすぐれていると言われています。
本稿ではZ世代人材をいかに定着させるかを考えるために、Z世代を含めた一般的な世代間の特徴とギャップ、それをふまえたZ世代の指導・育成に留意すべき点について述べたいと思います。

2.一般的な各世代の特徴

 まず、世代を「ベテラン世代」(概ね50代~)「中堅世代」(概ね30代・40代)「若手世代」(概ね20代)に分けて各世代の一般的な特徴をみてみましょう。

(1)ベテラン世代(おおむね50代~)

・いわゆる「バブル世代」以上
・大学生や若手社員のときにバブル景気の恩恵を享受し、「右肩上がり」の日本経済とともにキャリアを築いてきた。
・仕事上の成功体験に自信を持っている。
・「頑張れば報われる」と思う。
・「俺の若い頃は」などという自慢話、武勇伝を持っている。
・飲みにケーションが大好き。

(2)中堅世代(おおむね30代・40代)

・バブル崩壊後の就職氷河期を経験。
・人口のボリュームゾーンにあたり、常に激しい競争にさらされてきた。
・経済は、横ばいか右肩下がり。
・言われたことをやっていれば安泰ではなく、キャリアアップに関心がある。
・ロールモデルがベテラン世代のものしかなく、そのやり方を踏襲している。
・ベテラン世代の叱咤激励のもとで育つ。
・ベテラン世代と若手世代の間で板挟みになって悩んでいる。

(3)若手世代(おおむね20代)

・Z世代とほぼ同じ。
・少子化による人口減少世代。中堅世代のような激しい競争はない。
・ゆるい横のつながりの構築が得意。
・一方縦社会には不慣れで打たれ弱い。
・仕事の目的が「地位や年収」(外発的要因)ではなく、「やりがい」「充実」など内発的な価値観を重視する。
・世の中が「いい」と言っているものの価値よりも、自身が共感したものに価値を感じる。
・「コスパ」「タイパ」など、効率重視。無駄なことはしたくない。
・「エコ」「省エネ」感覚が強い。
人生観や価値観は個々人で千差万別です。一方で人の考え方・価値観はその人の育ってきた時代の環境に大きく影響されることも事実です。「違いがある」ことを認識し、その違いは自分と異なる時代環境に多分に影響されてきたことをまず認識することが世代間ギャップを乗り越え年の差を超えた円滑なコミュニケーションを図る第一歩ではないでしょうか。

3.Z世代の働き方の特徴

 次に、Z世代の働き方の特徴についてみてみましょう。

1.欧米的な働き方に肯定感

・自己犠牲など、従来の日本的な働き方に抵抗感あり。
・生産性や合理性に重きを置いた欧米的な働き方が魅力的に映る。

2.定時に帰る、帰りたがる

・定時に帰るからといって、仕事のコミットメントが低いとは限らない。
・終業後に資格の勉強をする、スポーツで体を動かす、など、スキルアップやリフレッシュに時間を充てている。

3.就社概念は薄い

・定年まで勤めあげる意識は希薄。
・「就社」ではなく「就職」。他社でも通用するスキルを身につけたいと思う。
・せっかく獲得した能力がリセットされるジョブローテーションがモチベーションの阻害要因になっていることも。

4.生産性・効率の感度が高い

・「下積み・雑用」的な扱いに対する抵抗感が他世代に比べて非常に強い。
・「その行動は自身の経験値になるのか」
・紙文化は非効率(会議資料を若手が印刷するのであればなおさら)
・根回し、会議のための会議など縦社会の非効率ワークにも拒否感がある。

5.リモートワークに対しては肯定的

・出社するのであれば、オフィス環境が整備されていて自宅より働きやすいこと、会社に行けば同僚や先輩社員に気軽にコミュニケーションがとれて自宅にいるよりも業務が効率的に行えることなど、新しい価値を企業が提供していくことが求められている。

6.即戦力主義

・Z世代の社員は自らを即戦力である、あるいは即戦力であるべきと考えている。
・「若手扱い」されるより、「戦力」として捉えてもらいたい。
・若手だからと言って簡易的な仕事を任せられるとやる気がなくなる。

7.仕事のストレスは人間関係

・業務そのものに対してのモチベーションは高い。
・しかし、人間関係のストレスが仕事に対する最大のネックになっている。
・上の世代が世代間ギャップに悩んでいる以上に、Z世代も他の世代とのギャップに悩んでいる。

8.飲み会での関係構築について

・かつてほど「飲みにケーション」は求められていない。
・飲み会の内容を上世代よがりな内容や愚痴などネガティブな内容にならないようにする、などの工夫が必要。
・気兼ねなく断れるようにフラットな関係性を構築しておく。

4.Z世代人材の指導・育成の留意点

 Z世代人材の指導・育成の留意点については、たくさん考えられますが、ここではこれまでみてきた世代間やZ世代の特徴をふまえ、三つのポイントをご紹介します。

(1)仕事のモチベーションが低いわけではないことを認める。

 残業や下積み仕事に対して前向きではないとしても、それが必ずしも「やる気がない」わけではありません。これまでみてきたように、残業よりも自分のスキルアップに時間をさきたい、下積み仕事でなく、もっと職場に貢献できる役割を果たしたい、という彼らなりの仕事に対する前向きな気持ちがあるのです。

(2)仕事の意義・目的をしっかり伝えることを強く心がける。

 とはいえ、もちろん残業が必要なこともありますし、育成の観点から下積み仕事をやってもらわなければならないこともあるでしょう。しかし、Z世代には「石の上にも三年」という価値観は期待できません。頭ごなしに「いいからやれ」とやってしまうと彼らのモチベーションは急降下です。Z世代人材は「無駄なことをしたくない」意識が強い一方、仕事の意義を理解すればしっかりやる意識も高いのです。したがって、業務を与えたり指導したりするときは「仕事の意義や目的をしっかり伝える」ことを意識するとよいでしょう。

(3)スキルアップにつながる教育研修に力を入れる。

 Z世代人材は「就社」ではなく「就職」という意識が強く、もともと他の世代よりも転職に対してのハードルが低い傾向があります。そのようなZ世代人材を自社に定着させるには、「転職するよりもここにとどまった方が自分のキャリアにとって有益である」と思ってもらわなければなりません。若手だから下積み仕事ばかりさせるのではなく、ステップアップを目指した教育研修をしっかり取り入れることも有効です。「うちの会社は育ててくれる」というような意識が若手社員に生まれればしめたものです。リクルーティングにもプラスに働くことでしょう。

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