就業規則の作成

就業規則の作成

就業規則作成・導入の流れ

弊社に就業規則作成支援をご依頼いただいた場合の作成支援・導入支援の流れは以下のとおりです。

1.現状ヒアリング

経営者様や人事労務ご担当者様と面談し、現在の人事労務管理上の課題やお考えをヒアリングさせていただきます。経営理念、業界慣行や企業慣行をお聞かせいただきます。また、現状の労働条件と最新法令との整合性や労働形態のチェックを行います。

2.就業規則原案の作成

ヒアリングした内容と提出していただいた資料をもとに、弊社で規定案を作成し、ミーティングで確認しながら作業を進めてまいります。

3.就業規則本則の作成

確認作業の終了後、経営リスクに対応し御社の実態に合った就業規則を作成します。

4.付属規程の作成

給与規程(又は賃金規程)、退職金規程、パートタイマー就業規則、嘱託就業規則、育児介護休業等規程などを必要に応じて作成します。その他、現行の付属規程があれば、新しい就業規則に対応するようにチェック・修正を行います。

5.全体のチェックと従業員説明会準備

作成した就業規則及び付属規程の全体的なチェックを行い、従業員への説明会の準備を行います。就業規則の届出に必要な労働者代表の選定、意見書の作成についての指導を行います。

6.従業員説明会の開催(又は就業規則の発表)、意見書の作成、労働基準監督署への届出

従業員説明会を開催し、従業員への周知を行います。その後、意見書を作成し、労働基準監督署へ届出を行います。

7.【オプション】各種運用書式の整備・運用指導

就業規則を運用するための各種運用書式を整備し、就業規則をはじめとする新制度の運用指導を行います。

就業規則を作成する上で最も大事な2つのポイント

就業規則とは、簡単に言うと、「会社と従業員との決まりごと・約束事を明文化した文書」です。就業規則は「会社の憲法」「職場のルールブック」とも言われます。就業規則は、会社の発展を左右する最も重要な文書といっても過言ではありません。

法律では、就業規則は常時10人以上の労働者を使用する会社は、労働時間、賃金、退職に関する事項など、法令で定められた事項を記載した就業規則を作成し、事業所の所在地を管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。また、就業規則の内容は、労基法をはじめとする諸法令、行政通達、判例法理をふまえそれらに従ったものにする必要があります。労基法に定められた基準を下回る労働条件を定めた就業規則はその部分について無効となり、労基法で定めた基準まで引き上げられます。したがって、就業規則を作成するためには、これらの法令等を深く理解し、精通している必要があります。

  1. 就業規則に定める内容は、大きく分けて次の2つです。
    (1) 労働条件の内容について
    (2) 会社の人事労務管理の方針について
  2. したがって、就業規則を作成する上で最も大事なポイントは、次の2点です。
    (1) 労働条件は「会社の実情」に合わせて作成すること
    (2) 会社の経営理念、価値観、考え方、義務など「会社の人事労務管理の方針」を記載すること

ポイント①「労働条件」は「会社の実情」に合わせて作成すること

例えば、就業規則に「昇給は毎年4月に行うものとする」と記載してあったとします。しかし、業績不振で経営判断により今回の昇給は見送ることになりました。ところが社員さんから「就業規則に毎年4月に昇給する、と書いてありますよね。約束を守って例年通りの金額で昇給してください」と言われた場合、これを拒否することはできるのでしょうか?就業規則の内容は「労働契約の内容」になります。日本は法治国家ですから、原則論でいうと一方の都合で相手方の同意なく契約内容を変更することはできません。したがって、いくら業績不振であっても昇給を実施しなければならない、ということになります。昇給を見送るためには、業績不振で昇給の見送りが必要であることを具体的に従業員の皆さんに説明し、個別の同意を得る必要があります。

なお、就業規則の変更により合理的であれば労働条件の不利益変更が可能なケースもあります(労働契約法第10条)。しかし、この場合であっても最終的には裁判所の判断にゆだねられることになり、無用な紛争は避けられません。

したがって、業績不振の場合に昇給を見送ることがあるのであれば、そのことを就業規則にきちんと記載しておく必要があります。具体的には次のような規定例が考えられます。

・昇給(昇給にはマイナス昇給を含む。以下同様)は原則として毎年4月に行う。ただし、会社業績の状況やその他の事情により昇給を行わない場合や昇給時期を延期する場合がある。
・昇給又はマイナス昇給の金額は、会社業績をもとに、従業員の勤務成績、勤務態度、その他の事情を会社が考慮・査定して個別に決定する。

もちろん、社員さんの生活を考えて「うちの会社は、業績不振でも赤字でも、毎年一定の昇給をする。それくらいの覚悟をもって経営する」という方針の会社であれば、そのように規定するべきでしょう。しかし、「会社の利益が出たときは従業員に分配する。しかし赤字のときの昇給実施は難しい」ということが会社の実情であれば、その実情に合わせて「昇給を見送ることもある」ということをきちんと就業規則に記載しておくべきです。そのほうが従業員さんに対して誠実な姿勢だと思いますし、無用なトラブルを避けることにもなります。

就業規則に定める労働条件は昇給以外にもたくさんあります。諸手当や残業代の制度、賞与や退職金など賃金に関すること以外にも、試用期間について、応援作業や配転作業はあるのか、勤務時間や休憩時間、休日、有給休暇の条件は、病気になったときの休職について、育児や介護の規定、退職や解雇について、どのようなことを行ったら処分されるのか、その処分の内容は、などなど様々な事項について「会社の実情に合っているか」「その内容が法律・行政通達・判例法理に従っているか」を細かく吟味検討して作成することで、会社の実情に合った、コンプライアンスも満たした就業規則を作成することができます。

このような就業規則であれば、会社にとっては、経営理念や経営計画に基づいた「会社の意図した労務管理」ができるでしょう。また、従業員にとっては「自分の働く会社は従業員に約束したことはきちんと守る誠実な会社だ」と自社に対してプライドがもて、ひいては離職防止やモチベーション向上につながります。

ポイント② 会社の経営理念、価値観、考え方、義務など「会社の人事労務管理の方針」を記載すること

就業規則に記載する内容は「労働条件の内容」だけでなく、「会社の人事労務管理の方針」を記載するべきです。就業規則は「会社の憲法」です。例えば我が国の憲法には「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」という「日本国憲法の三大原則」という国の価値観や理念、考え方がきちんと記載されています。また、憲法には「納税の義務」「勤労の義務」「教育の義務」という国民の三大義務がはっきりと記載されています。

したがって、就業規則に単に法律を守った労働条件を記載しただけでは「会社の憲法」とは言えません。我が国の憲法のように、会社の理念である「経営理念」それを貫く価値観や考え方、そして従業員の権利だけでなく「義務」についてもしっかりと規定するべきです。

ある製造業の中小企業の例ですが、その会社の就業規則には

  1. 職人をしっかり社内で育てるため、社員が定着する取り組みとして、
    ①職場の雰囲気をよくする仕組み
    ②給与をしっかり高く払えるような仕組み
    ③当事者意識を育む仕組み
    に積極的に取り組む。

という労務管理の方針が記載してあります。

この会社の経営理念は「全従業員の物心両面の幸福を追求するとともに豊かな社会づくりに貢献する」というものです。

この会社の就業規則には、

  • 「技術で日本一になろう」
    「うちの仕事は注文が入ってから作る、作り置きができない仕事。だから注文がきたときが稼ぎどき。みんながいい賞与をもらえるよう、忙しいときはしっかり働こう。そして休めるときはしっかり休もう」
    「ミスは隠さず報告しよう。そしてみんなでカバーしよう」
    「ひとりひとりが利益を意識しよう」

などと記載されています。

中小企業において「給与をしっかり高く払う」ためには、個々の社員がしっかり働くとともに職場全員で協力してカバーしあうことが必要です。また中小企業において休暇をしっかり取得するためには、「忙しい時にはしっかり働く」「休めるときにはしっかり休む」といったメリハリある働き方を行うことと、職場全員で協力しあう風土が求められます。

会社の理念・価値観・考え方に基づく人事労務管理の方針、そのために従業員が果たすべき義務についてしっかり就業規則に記載することにより、

  • ・「会社の経営目的・経営理念の実現」「会社の経営目標の達成」
    ・「従業員の成長」「しっかりした給与・賞与」「協力しあう風土」「働くときはしっかり働き、休むときはしっかり休む」

といった、「会社の発展」と「従業員が定着する働きやすい環境」の両立が可能となります。

 

 

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