月刊人事労務

20年間通勤手当を多くもらっていた社員。差額は全額返してもらえるの?

Q.バス通勤をしていると申告していた従業員が実際は20年間マイカー通勤をしていました(通勤手当はバス通勤の方が高額になる)。就業規則に基づき20年間の通勤手当の過払い額を計算したところ120万円になりました。従業員に弁償するよう求めたところ「20年も気づかない会社の管理も悪いんじゃないですか。賃金の請求時効は3年なのでそれ以上は遡って支払う義務はないですよね」と言われてしまいました。3年分しか返してもらえないのでしょうか。
A.不当利得返還請求権の時効期間は10年(民法167条1項)ですので、発覚時から遡って10年分の通勤手当の過払い額が請求可能と思われます。なお懲戒権については時効がないので懲戒処分を行うこともできます。
【ポイント】不当利得返還請求権の時効期間は10年、懲戒権には時効なし。

 賃金の請求時効は3年(労基法115条、2020年3月31日以前の賃金債権については2年)とされています。しかし法律上支払うべき金額はマイカー通勤による通勤手当です。多めに払った部分は従業員に法律上受け取る権利はありませんので賃金ではなく不当利得となります。

 したがってこの場合は賃金の時効ではなく不当利得の時効(10年)が適用されます。(なお通勤手当を故意にだまし取ろうとした場合などは、不法行為の時効20年が適用される余地もあります。この場合は不法行為を会社側が立証しなければなりません。)

 不当利得の返還とは別に会社には懲戒権があるので就業規則の懲戒規定に該当すれば懲戒処分も行うことができます。(懲戒には時効がありません。)

 また「会社の管理も悪い」という反論についてですが、例えば定期券のコピーを毎回提出させる、定期券購入の都度通勤経路を申告させる、就業規則を整備するなどの日常的な管理の強化も行っていきましょう。
(当社ニュースレター「月刊人事労務」2021年11月号 volume 198 「紙上相談室」より)

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